アシカ小屋

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空港における出発客と到着客の動線混在に関するちょっとした話

特に大きく報じられることはなかったようですが、先日起きた騒ぎです。

沖縄タイムス | 那覇空港で手荷物にハサミ 検査で大混雑 http://article.okinawatimes.co.jp/article/2013-03-27_47152 

 

成田空港から到着した便に搭乗していた客の荷物からハサミが落ちて、それを乗務員が拾って返したけど、「それヤバいんじゃね?」ってなったときには時すでに遅し。客の行方がわからなくなって、結果的に空港のセキュリティエリア内にいた乗客・航空機内に搭乗した離陸待ちの乗客全員に対して保安検査をやり直したという話。

 

国交省によると、はさみは「先端が尖っていないもので刃体6cm以下であれば(客室内に)持込可能」とのこと。

http://www.mlit.go.jp/common/000185234.pdf

また、朝日新聞の報道では、「拾って乗客に返した乗務員は『全長10cm、刃渡り6cm未満だと判断して返却した』としたが、社内の連絡の過程で『刃渡り10cm』として伝わってしまった」とあります。

機内にはさみ持ち込み、ダイヤ大幅変更 那覇空港 - 朝日新聞デジタル http://t.asahi.com/a95m

 

本当に刃渡り6cm未満であったならば成田空港の保安検査に不備はなかったということになりますが、この騒ぎで一瞬不思議に思うのは、「凶器」(はさみも凶器になりうる)を所持しているのは到着客なのに、なぜ出発客まで保安検査の再実施という大きな影響を受けたのか、ということでしょうか。

これは1ヶ月ほど前のエントリーでも余談として書いたことなのですが、那覇空港は羽田1タミ同様、出発客と到着客の動線が混在しており、両者の接触が容易なのです。

したがって、はさみを所持していた到着客が、保安検査後の出発客にそのはさみを手渡す……ということが可能になるわけです。

 

比較的最近に完成したターミナルは、出発客と到着客が混在しないよう完全分離されています(羽田2タミ、中部など)。福岡も3タミ到着時は出発エリアを通過するものの、混在する場所には係員が配置され、出発客との接触は容易ではないようです。

 

「そういうことが起こるんだったら、出発客と到着客の動線混在は保安上やばいんじゃないの?」という声も挙がりそうですが(というか、僕自身そう思っています)、混在させる理由というのもあるようで、乗り継ぎ時の利便性が云々ということのようです。

知ってて安心・快適「空の旅」 - 出発客と到着客の分離

http://www.kokuitten.com/travelbyair/kaiteki/airport/departurearrival.html

 

羽田1タミは言わずもがな日本の国内線においては最大のハブ、那覇空港も沖縄の離島便と他地域とのハブの役割を果たしており、他と比べて国内線同士の乗り継ぎが多い空港です。

そのような事情から、両空港の動線は意図的に混在させているのかもしれません。

とはいえ、今回のような騒ぎが今後も起きないとは限りませんし、やはり乗り継ぎ客にとっては「やりすぎ」と思われるかもしれませんが、出発客と到着客を完全分離させ、乗り継ぎ客に再度保安検査を受けてもらう(場合によっては、乗り継ぎ客優先・専用検査場を作るなど)…という形が保安上は望ましいのかなと思ったりもします。各空港会社・空港ビル会社にとっては負担の大きいでしょうけども。。

 

 

ちなみに、1999年に発生し機長が亡くなった全日空便ハイジャック事件も、この盲点を突いた犯行だったと言われています。

全日空61便ハイジャック事件 - wikipedia

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%A8%E6%97%A5%E7%A9%BA61%E4%BE%BF%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%83%E3%82%AF%E4%BA%8B%E4%BB%B6

本来客室内に持ち込めない包丁を、なぜ犯人は持ち込めたのか。このとき犯人は伊丹空港から羽田へ向かい、事件の発生した羽田発新千歳行き61便に乗り継ぎました。

 

伊丹→羽田便に乗る際、貨物室内に預ける鞄の中に包丁を忍び込ませ(客室内には持ち込めないが、預ける荷物には入れられる)、羽田に到着して預け手荷物受取所で凶器入りの鞄を受け取った後、受取所から出発エリアに逆行して凶器を持ったまま新千歳行きの当該航空機に乗り込んだ……と言われています。こうして、保安検査を受けることなく、凶器を機内に持ち込んだようです。

手荷物受け取り所から出発エリアに逆流できないようにしておけば、この事件は防げていただろうし、もっと言えば、出発・到着両者が混在しないようにすれば……ということです。

この事件をきっかけに、飛行機から降機して手荷物受取所に入る際は、逆流できないように一方通行ゲートが設置され、警備員も配置されるようになりました。

 

という余談です。

 

 

明日から社会人となります。今後ともよろしくお願い致します。